貴方という居場所



ランシーン「終わって・・・しまいましたねぇ・・・」

ダークウィズカンパニーでの社長代理の仕事を終えたランシーン
しかし彼を包むのは仕事を終えた自由よりも
役割を終えたことによる空虚感の方が大きい
何かまだ仕事が残っていないか確認を取ったが
それも徒労に終わってしまった

変わりに言われたことは
たまにはゆっくり気分転換などしてきては、だ

ランシーン「そうですねぇ、気分転換ですか・・・」

ランシーンは以前よく居た
大きな換気口のある部屋の椅子に座り風を受ける

今ではよどんだ風は一切無い
それどころか運ばれてくる風はどれも心地よいもので―

しかしそれは残酷にも
今の彼には何の役割も無い事を伝えている
むしろ彼が導くものは戦争であり
今の世界の現状では不要のものである

そんなことばかりが頭を横切る
ランシーンは出かけることにした
このままでいたら何かが壊れてしまいそうな気がしていた



シロン「あ〜・・・今日もいい風が吹きやがるな〜」

もう一方の片割れであるシロンは今日も秘密基地の屋上で
心地よい風を受けながら昼寝をしている

サーガたちはまだまだ学校にいる時間
一緒に居ることも多かったが
授業を受けている間は流石に退屈だ
気分的にも今日の最高の風を最高の風が吹く場所で堪能していたかった

シロン「今頃なにしてんだかな〜・・・」

風のサーガはきっとこの心地よい風に当てられて
授業中居眠りでもしてるんじゃないか
それに対してメグが起きろと一発メグチョップなんかやってみたり

なんて事を考えていると
ふとあることに気がつく

シロン「俺・・・随分と暇なやつだなぁ・・・」

何かを求めるように飛び立つ
最近は色々貰いっぱなしだ
たまには誰かの為に何かしてやらないとな



黒い翼は当ても無くただ空を飛び続けていた
何かをして楽しもうという感情は無い
元々無駄な行動をするようにはできていない
今日流れている風は不快なほど心地よい
正に自分の居るべき場所が見当たらない
これでは一人ただ風を受けている時となんら変わりは無い
もはや不安という感情すらなかった
ただ、風の中に消えてしまいそうな
そんな感覚がしていた



シロン「おい!ランシーン!」

かけられた声にハッとし、その方向を見る

シロン「ようやく気がつきやがったか」

そう話す主との距離はかなり近い
ここまで来るまで気がつけなかったのかと
自分自身の状態に自嘲気味になる

シロン「にしても珍しいな?今の時間にこんな所で」

話しかけられている
話し返すために心が動く

ランシーン「毎日仕事ばかりですからたまには休め、とのことです
貴方は相変わらず暇そうでよろしいことで」
シロン「んなっ・・・!」

シロンは精一杯のいいわけをする
それに対して揚げ足を取ると不機嫌そうに言葉をぶつけてくる

何度でもこう思う
心とはすばらしいものだ
こういう馬鹿なやり取りでさえも何か自分の中が満たされていく


シロン「あ〜あ〜わかってるよ!だから今何かできることは無いか探してる所だよ!」
ランシーン「貴方のその足りない頭で何か見つけられるんでしょうかねぇ?」
シロン「言ってろ!じゃあ行くからな。ゆっくり休めよ!」


ああ、心が離れていく
私から出る言葉は突き放す言葉ばかりだ

本当は、もう少し・・・

ランシーン「どこへ行くつもりですか?」
シロン「はぁ?」

ランシーン「いやね、なんなら私がそれを見つけてやっても良いのですが」
シロン「余計なお世話だっつーの!ったく・・・ぅおっ!?」

ランシーンはシロンを後ろから抱きとめる

シロン「・・・なんだよ」
ランシーン「・・・どこへ、行く、つもり・・・ですか?」

震える声と同時に抱く力を強める
そこから伝わってくるのは温もりだけではない
それ以外の部分・・・心

シロン「やめろよ・・・らしくねぇ・・・」
ランシーン「フフ・・・そうですね・・・ならばこうしましょうか?
いつも怠けている罰として今日は私に奉仕しなさい」

そう言って首筋を舐め上げる

シロン「ぅっ・・・ぁ・・・らしく、なってきたじゃねえか・・・」
ランシーン「可愛いやつだ、拒絶したりとかしないのですか?」

その言葉にピクッと反応し顔を逸らす
わずかに見える頬は少し赤くなっているように見えた

シロン「反則だ、あんな震えた声出しやがって・・・」

シロンは片手をランシーンの顎にそっと手を触れる

ランシーン「そうですか、では遠慮なく・・・」

今度は耳を舐め上げ甘噛みする
抱きついたその手は腹部と胸部を優しく撫で上げる
柔らかな感触と薄っすらと覆われている毛の感触が心地よい
撫でるその手をシロンの手が追ってくる

シロン「ランシーン、もっと良く顔が見たい・・・」

抱擁を少し解く
体の向きをを変え正面を向き合う

真っ直ぐに向けられるランシーンの視線と
少し薄目になり潤んでいる瞳で見つめ返すシロンの視線
その視線を離すことなくランシーンが口付ける
それに答えるようにシロンは口付け返し目を閉じ感触を楽しむ
シロンが抱く力を強めるのを合図に
更に口付けは濃厚なものになっていく

相手と一つになる感覚
自分に足りない部分が徐々にうまっていく感覚を
ランシーンは感じていた
心が満たされていく
シロンも同じような感覚を感じているのだろうか

ふとシロンの心が別のところに向けられたのを感じた

ランシーン「・・・どうしました?」
シロン「ここじゃちょっと・・・」

そう言ってシロンの頬が赤みを増す
確かに上空といえどここでは見られてしまう
いや、もう誰かが見ているかもしれない
始めはそういうのは関係ないと思っていたが
今では何故か恥ずかしいと感じるようになっていた

ランシーン「場所を変えましょう・・・」

シロンを抱え空へ飛ぶ
高く、もっと高く
誰からの視線も届かないほどに
誰にも邪魔されないほどに高く・・・!

たどり着いたのは雲の中
辺りを包む白い空間
ここならば誰にも見られる心配が無い
余計なものも何も見えない

相手しか見えない

ランシーン「この辺で良いですかね?」

その声を合図に再び口付けが再開される
上空を吹き荒れる風は
本来その環境下に居る彼らの心と体を高揚させる
それでいて低い気温は更に相手のぬくもりを求めさせる

シロン「ラン・・・体・・・触りたい」

その言葉に応える
肌と肌が触れる
より一層相手を感じる

離れたくない
このままずっと一緒にいたい

ランシーン「シロン・・・シロンっ!」
シロン「ラン・・・居るから・・・ちゃんとここにっ居るから・・・!」


心も体も全てが一つとなる
全ての思考、感覚を共有する

それは彼らだけの空間

誰にも邪魔されない彼らだけの空間







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