皮肉なほどいい風が吹く
とフィンは思った
大地に戻った自然からの独特なエネルギーが
自身を満たすのが良く分かる
試しにと、意識を集中し、地面を擦る様に手をかざすと
小さなつむじ風を作った
サーガとしての力が戻ってきている
これから覚醒する者も現れるだろう
ふと視線を移すと眠りから覚めたばかりのシュウが不安の表情のまま飛び起き、
辺りに居る仲間たちを確認すると安堵の表情を浮かべた
シロンと会話を交わしているようだが、少々遠く、何をしゃべっているとかは分からなかった。
が、その口の動きからお互いの名前を呼び合っているのが分かる
やがて、恥ずかしさに耐えられなくなったシロンの方からそっぽを向く
多分、もう呼ばねぇとか言っているんだろう
フィン「終わったぜ?あいつらもちゃんと無事に、なあ」
そう空中に投げる言葉がむなしく響く
フィンは再び目を覚ました時と同じだろう場所に、仰向けに倒れこんだ
同意したとはいえ、時を共有したものは居ない
確か、レジェンズウォーの終わりには記憶がなくなっていたというが、
本当にそうであったらどんなに楽であったろう
そういう感情が涌いてきたのを感じ、咄嗟に振り払う
フィン「忘れちゃ、駄目だよなあ」
雲をつかもうと手を伸ばす
それがつかめないという事をわかって
「気分はどうだ?」
フィン「おわぁっ!?」
突如影ができたと思うととてつもなくでかい顔が覗きこんできた
フィン「風の竜王!?喰われるかと思ったじゃねぇか!」
風の竜王「はは、悪いな。少々用事があってなあ」
フィン「用事?」
風の竜王「どうやら私の負けのようだな」
フィン「へ?」
風の竜王「用事は一つ済んだ。もう一つは・・・」
風の竜王が視線をゆっくり動かす
その先には小さい羽がゆらゆら揺れながら漂っていた
竜王が視線をフィンの方向へ向けると、それに応じるかのように
フィンの元へと送られていった
フィン「これ・・・」
風の竜王「分かるだろう?残留思念のようなものだ。
どういう結果を残すかは分からないが、取っておけ」
それだけ言うと、今度はシロンとシュウの元へゆっくり歩み寄った
風の竜王「大きくなったものだな」
シロン「説得力ねぇ・・・」
シュウ「でっけぇなあ・・・」
風の竜王「お前達が選んだ道、これからも見させてもらおう。
何かがあったときは私にも手伝わせてくれ・・・それともう一つ」
風の竜王が翼を軽く動かすと、風が建物の隙間へ入っていく
するとそこから一体のレジェンズが引きずり出されてきた
シュウ「あ」
シロン「ランシーン」
軽く抵抗した所為か、着地にも失敗し、うつ伏せ状態のまま滑り込むように目の前まで持ってこられた
ランシーン「何か・・・用ですか?」
風の竜王「こいつを、頼む」
ランシーン「むぅっ!?」
シュウ「ん、おっけ、てかレジェンズクラブの一員だからな。部長の俺が責任を持つ」
シロン「まあ・・・いいんじゃねぇの?」
ランシーン「待て、何故そうなる」
風の竜王「若干、途方に暮れてたのではないのか?」
ランシーンの表情が曇る
風の竜王「レジェンズウォー、と呼ばれていた戦いは終結した。
今後起こるとは断定できないがな。それで今のところ、お前にはやる事が無いだろう。
世界を保護する役目はあれど、それは今までの戦いになぞる事はできない。
そういった状況で、今のお前に何がある?」
戦いが終われば眠りにつく、今までそれが普通だったのだ
が、今はそれが無く、彼、ランシーンは存在の目的を失いかけている
敷かれたレールの上を歩くようにして生きてきたランシーンには、少々辛いかもしれない
風の竜王「逃げるな、心をもっと良く知れ、心と共にあれ。後はどうにでもなれ」
シロン「おいおい」
風の竜王「なんなら、私と共に来るか?まあそれも儚いそうにないがな」
風の竜王は視線をシュウに送ると、親指を立てて竜王に返した
シュウ「お前もだぞ〜、理・事・長!」
風の竜王「理事長?」
シロン「確かに学校とかクラブで考えると偉いかも知れねぇが」
ランシーン「格下げ、な感じもありますねぇ」
シュウ「え、そなの?」
これは敵わぬと、笑い声を上げる竜王
落ち着こうと呼吸を整え、最後に一言を沿え、風となり去って行った
風の竜王「お前達がいれば、私の出る幕も無さそうだ」
−−−−−−−−−−−−−−−−
「で、あるからして、我々レジェンズは・・・」
「ガリオン」
ガリオン「む?なんだランシーン?」
ランシーン「ほぼ全滅の様、ですよ?」
とある大きな施設内
会見か何かだったのだろう、何台ものカメラが並べられているが、
それを扱う人々は皆、ノックアウト状態で地に伏せていた
ランシーン「流石に急遽という事もあり、準備がまともにできてなかったんでしょうねぇ、
まさか24時間以上も話が続くとは・・・」
ガリオン「む・・・むぅ・・・むぅううううう・・・・!」
今にも爆発しそうなガリオンであったが、それを止める声があった
「待って!まだ残っているわよ?」
「こっちもだって、まだまだいけるぜ!」
ハルカとフィンがかつてのようにレジェンズファンとして追っかけをしていたのだった
目元にクマを作りながらも、必死でメモやらカメラやら
ガリオン「ゴホン、では、あと12時間付き合ってもらおう」
ハルカ「じゅっ・・・」
フィン「じゅうにぃ・・・」
ガリオン「冗談だ」
それを聞いて倒れこむ二人にガリオンの笑い声が響き渡る
ガリオン自身、笑うという事を久々に思い出した感じがしていた
ガリオン「我々レジェンズは、戦いの歴史を終え、再び共存の道を歩く事となる!
全ては我々次第という事だ。以上で終わる」
ガリオンが席をはずすと同時にマックが姿を現す
マック「ガリオン、おはようなんだな!」
ガリオン「昨夜は良く眠れたかい?」
マック「うん、とっても。ガリオンもなんか、とても嬉しそうでよかったんだな!」
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グリードー「我ら!種族は違えども!!」
ウォルフィー「運命を、共に擦ると誓い合い」
リーオン「固い絆で結ばれ・・・うっひゃあ!?」
いつもの決め台詞と決めポーズを阻害され、必死で攻撃を避ける
グリードー「まずい、もう一度だ!」
ウォルフィー「くっそ、話だけでも聞けってんだよ!」
リーオン「あと、部長に頼まれたレジェンズクラブの宣伝もやらないといけないんだよなあ・・・」
再びレジェンズが地上に完全に現れた事により
各地で小競り合いが続いていた
メグ「まったく、余計な作業増やしちゃって。治療するからじっとしててね。・・・ってじっとしてろぉ!」
和解が失敗した場合は大抵戦闘となる
味方と必ず出る相手側の負傷者の治療を担当するメグとズオウ
しかし、時折響いてくる謎の打撃音と悲鳴が聞こえてくる
こういった時には強い交渉力があるらしい
ディーノ「やっぱりなんか苦手だ・・・絶対にくらいたくないものだな」
グリードー「いいお灸にはなっているようだがなぁ」
俺と一緒に夢を見ないか、などと別方面からもメグの人気は上がっているようだった
メグ「さあガリオンさん達が戻って来るまでもう一踏ん張りよ!」
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エレメンタルチェンジの声が響き渡る
ネクロム色に体は包まれ、闇色の中を進む
スタン「そろそろ到着かな?」
パレット「あぁ・・・」
見えてきた地表にゆっくりと降り立つと
目の前にそびえる神殿へと入っていく
スタン「アリサっ!」
その奥にはアリサとティアマットの姿があった
アリサ「久しぶりね。元気でやっていたかしら、パレット」
パレット「ん?あぁ・・・」
スタン「やっぱり先にそっちへ行くんだ・・・」
ティアマット「せっかく来たのだ。少し遊んでいくか?」
パレット「そのお誘い、今のネクロムな俺じゃあ断る事ができないぜ?」
スタン「カムバック」
パレット「んぁ!?」
スタン「だーめ。次は光の竜王の所へ行かないと」
アリサ「あら、そうなの」
表情を変えず、淡々と受け答えをしているアリサだが
スタンはごめんね、また来るから、と一言告げる
アリサ「争いは起こるけど、それはそれで秩序ができるものなの。
力の上下関係からね。ネクロムは問題が起きないようにするわ。
それとも、何か問題を起こした方が、ゆっくりしていってもらえるかしら?」
スタン「それは勘弁してください・・・」
−−−−−−−−−−−−−−−−
秘密基地の屋上
そこに風が二つ仰向けに寝そべっている
シュウ「ん〜・・・」
シロン「ん?」
シュウ「いい風だな〜」
シロン「まあ、な」
シュウ「マックどうしたっけ?」
シロン「ガリオンと一緒に会議かなんかだろ?そういうの苦手だからって抜け出してきただろ?」
シュウ「メグは?キザ男は?」
シロン「少し遠出して小競り合いの収拾に」
シュウ「ん〜・・・」
シロン「なんだよ、さっきから」
シュウ「なんかさー、せっかく時間も空いたし、なんかしたいと思うけどさー」
シロン「ん?またいつもみたく適当に呼びだしゃ良いんじゃねぇの?」
シュウ「そう思うけどさー、なんか、今はただこうして寝っ転がりたいっていうか、もったいないけどな〜時間」
シロン「そっか。まぁいいんじゃねぇの?」
シュウ「ん、いっか、それでも」
穏やかな風が吹く
見つめている空の雲がゆっくりと流れる
シュウ「あっ!」
シロン「おっ?この風は・・・」
流れる風の変化を感じ取った二人は顔を見合わせ笑みがこぼれる
シュウ「予定変更!疲れてるとか関係なし!レジェンズクラブ召集だ!」
シロン「うぃ。先に行っておくか?集めるにしても時間かかりそうだからなあ」
シュウ「もっちろん!」
−−−−−−−−−−−−−−−−
フィン「ふぁ〜・・・やっべ、本当に限界」
なんとか宿泊施設まで足を運んだフィンは窓を全開にしてからベッドに横になる
フィン「ん〜、いい風じゃねぇか」
心地よさを感じつつ目を閉じる
風の音、体に触れる風を感じながら意識を沈めていく
しかし、それは阻害された。その風によって
フィンは飛び起き、窓から飛び出す
その懐かしい風を感じて
飛び込んだ先に突如竜巻が形成される
それに受け止められたと思うと、風が形を成していく
忘れもしないその感触
「うわっとっと、いでっ!?」
姿を現したウインドドラゴンは、突っ込んできたフィンを受け止めきれずに倒れてしまう
「いったぁ・・・いきなり何を・・・」
フィン「おかえり」
「えっ?・・・・・」
戸惑いを見せるウインドドラゴン
状況を上手く飲み込めず、またどうすればいいか分からない
そうこうしていると、フィンの部屋の荷物から羽根が
風に乗って飛び出し、ゆっくりと降りて来る
それがウインドドラゴンの体に触れると、風に変わり、ウインドラゴンの体に吹き込む
フラッシュバックされるその中に込められた記憶
それを全て受け止めると、察したように表情が落ち着きを取り戻した
「僕は、そっか、そうなんだ・・・」
フィン「・・・・・」
エン「ただいま・・・」
フィン「おかえり・・・おかえりっ!」
もう少しこうして居たかったけど、そうもいかないらしい
遠くからではあるが、こちらを呼ぶ声がある
多分、部長だろ
シュウ「お〜い・・・お〜い!」
まあそれでも、エンからは早速嬉しそうな笑顔がこぼれている
体に鞭打ってでも、少し、遊ぼうか
そうしてられるのもきっと、今だけだから
精一杯に・・・今できることを
−終−