吹き抜ける風がティアマットを押しのけ
シロンの元へと飛び込んだ
シュウ「悪ぃ」
シロン「ん」
勢いをそのままに出口へ向かい
あっという間に風は過ぎ去って行った
ティアマット「・・・つまらぬなあ。復活の一時、せめて大暴れしてやりたいものだったが」
「この一時だけ大暴れするよりも、足掻いた方がよっぽど楽しいわよ?」
ティアマット「アリサか」
暗がりから声の主がゆっくりと姿を現す
アリサ「どうやら間に合ったようね。後は任せて見守りましょう」
ティアマット「今まで私も覆せなかったもの、そう簡単に行くと思うのか?」
アリサ「彼らなら・・・そう思わずにはいられない」
ティアマット「ふ・・・ならば」
ティアマットは、風が去った方向へとゆっくり歩みだす
ティアマット「なんとか維持させるためにも、これ以上は暴れないでおこう」
ティアマットを見送ったアリサは視線を移す
その先には、黒さを失いつつあるタリスポッドがあるのだった
シロン「うわ、あの野郎・・・ずいぶんと派手にやりやがったなあ」
ランシーン「遅いぞ・・・」
遅いと返した主は、相手とほぼ相打つ形となっていた
シュウ「えっふぉ〜〜、ふぉうふぁっふぇふんふぇふふぁ〜?」
シロンはシュウの顔を腹に押さえつける形で抱えている為に
シュウから状況の説明が求められたようだ
シロン「ん〜、ちょっと刺激が強いから大人になってからな」
シュウ「ふぇっ?」
激しい戦闘だったのだろう
お互い傷だらけで動けなさそうな上に
周りに飛び散っている血の量も相当なものだ
ランシーン「では、行きましょうか」
再び渦巻く風は一つとなり、カネルドウィンドラゴンへと戻る
そして、外の光を目指して一直線に飛び去っていった
リンドブルム「まだ・・・戦えるぞ」
風が飛び去った後に動かない体を無理やり動かし
リンドブルムはその方向を見つめる
ティアマット「無理をするな。これ以上は消滅してしまうぞ」
後方から現れたティアマットの言葉に
リンドブルムはため息を一つした後、再び体が沈み込む
ティアマット「まあそう落ち込むな。面白いものが見られるかもしれないからな」
ティアマットがリンドブルムの体の上に頭を落とす
二体は、徐々に一つの闇の光になっていくと
闇に溶け込むように消えていった
「戻ったか」
ジャバウォックの体内から飛び出てすぐに出迎えるものの姿があった
シロン「カネルドヘキサドラゴンか!」
パレット「早速始めたいところだが、まずは挨拶して回った方がよさそうだな」
そう言われ、多くの視線がこちらへと向けられている
その表情は、安堵のこもった微笑みと言ったところだった
皆の居る場所へ降りると、カネルドウィンドラゴンは軽く小突かれ
風のサーガは、誰かのチョップを受け、綺麗な放物線を描いた
シュウ「いででで・・・本当に、リアルに死ぬっての・・・・・ん、でも、生きてるって感じ・・・!」
メグ「馬鹿。まだやる事残ってるでしょ?」
シュウ「そう!あのでっかい奴を倒して〜!!」
パレット「ではなく」
シュウ「あら・・・」
ディーノ「全く、さっきまであの中に囚われてたとかそういうのもう関係ないみたいに」
マック「いつものシュウ、なんだな!」
スタン「みんなにはある程度説明しておいたんだ。えっとね・・・」
パレット「トゥルーウィンドラゴンを復活させる」
シロン「トゥルーウィンドラゴン?」
パレット「そうだ、光の竜王から確認も取った。この世界の仕組みを創った者だ」
シュウ「うっわ、なんかいきなりすげえ展開・・・」
メグ「あんたは黙ってなさい」
止めの一撃となったか、シュウは白い煙を上げながら地に伏した
パレット「トゥルーウィンドラゴンは、全属性を司る・・・竜王の力が必要だ。その準備もしてきた」
パレットが空を見上げる。そこにはそれぞれの属性を司る六つのクリスタルが浮遊していた
パレット「やってくれるな?」
シロン「ああ・・・」
カネルドウィンドラゴンがゆっくりと空へ昇る
クリスタルのすぐ傍まで来ると、目を閉じ集中し始める
手を胸の付近で交差させると、体が徐々に光で包まれていき
その光にクリスタルが共鳴していく
そして、その交差させた手を開放すると
クリスタルからそれぞれの属性の紋章が浮き出る
ランシーン「風に導かれ、出でよ。竜王達よ!」
火山は噴火し、大地は裂け、泉は溢れ、大気がうねる
火、水、土、風の竜王がその中心から現れる
クリスタルから発せられる輝きの光は光の竜王となり
その光によってできた影が収束されていくとその影から闇の竜王が姿を現した
現れた竜王達が自身の属性のクリスタルへと力を送る
そのクリスタルをカネルドウィンドラゴンが風で運ぶ
やがて一つになったクリスタルは、風に包まれていく・・・
ガリオン「来る・・・?世界が、来る・・・・・」
その風が払われた瞬間に、そこから一体の竜が姿を現す
パレット「トゥルー、ウィンドラゴン・・・」
トゥルーウィンドラゴンがゆっくりと目を開ける
シロン「この、世界のことで話しがある」
シロンは早速話しかけるが、その声が届く様子は無い
パレット「・・・!?まずいっ!」
トゥルーウィンドラゴンの片手が挙げられる
そこに収束していく輝き、スピリチュアルの力
放たれる先は・・・ジャバウォック
パレット「ライトニング・ブレイク!」
何かを察知したカネルドヘキサドラゴンのパレットが
その攻撃に先回りし、なんとか受け流す
光の竜王「失敗か?この状況を見ても聞く耳を持たぬとは・・・!」
パレットが、そのまま攻撃の態勢をとる
パレット「エレメンタルチェンジ―」
だめだ
パレットの中で確信めいた何かが脳裏をよぎる
トゥルーウィンドラゴンの元の属性は風
それに合わせる形のエレメンタルチェンジ
しかし、その瞬間、目の前に迫ってきたのは炎だった
スタン「パレット!」
一瞬時間軸がおかしくなった
エレメンタルチェンジを戻す、或いは他の属性にと考えた時には
地面めがけて落下して行く途中であった
その状況を見ていた四大竜王が攻撃態勢を取る
しかし、それよりも早くトゥルーウィンドラゴンから
四つの光が走る
それぞれの弱点となる光がそれぞれの竜王を貫いた
瞬間、火の竜王は氷の中に閉ざされ、
土の竜王の体は炎上し、
水の竜王は竜巻の中に閉じ込められ、
風の竜王は攻撃された部分から急激に成長した茨に捕らえられた
グリードー「まさか・・・竜王が手も足も出ないってのか!?」
パレット「竜王達は・・・トゥルーウィンドラゴンを呼び出すために、力の半分を既に使っている・・・!」
ウォルフィー「なんだってそんな奴呼び出したんだよ!?」
ランシーン「この戦いの螺旋を創りし者に、
それを世界を変えてもらうしか方法が無い、ということですよ。
それ以外の事が出来ない為の上手い仕組みなのかもしれませんねえ」
リーオン「うっわ、ややこしい!」
再びトゥルーウィンドラゴンからジャバウォックへ向けて攻撃が発射される
しかし、それを遮るように、闇と光の障壁が行く手を阻む
光の竜王「闇と光」
闇の竜王「この二つの属性を超えるのは少々手間がかかるぞ?」
光の竜王「長くは持たないがね」
グリードー「止むを得ん、あいつを止めるぞ。話はそれからだ・・・うおっ!?」
グリードーの行く手を阻むかのように目の前の地面が爆ぜられた
ガリオン「・・・・・・・」
グリードー「どうしたんだ・・・?」
ガリオン「っ!頭が・・・・!?」
グリードー「ガリオン!?」
ズオウ「危ない!!」
ウォルフィー「うわっ!?」
リーオン「なになにどーしたの!?」
パレット「・・・・・」
マック「ガリオン!」
スタン「パレット!?」
ディーノ「一体どうして・・・」
メグ「なんでこっちを攻撃するの!?」
ガリオンとパレットは、時に味方を攻撃し、時に自分を抑えようとしている
ガリオン「世界の・・・世界の声がっ・・・!」
パレット「とめらんねぇ・・・!!」
シロン「おいおい、こりゃあ俺らしか相手できなさそうだな」
ランシーン「まあ、やるのでしょう?」
シロン「ああ、可能性がある限り!」
自問自答をするかのように自身と会話するカネルドウィンドラゴン
トゥルーウィンドラゴンめがけて飛び立つ
シュウ「ちょーっと待ったああああ!!」
シュウのその叫びに周りの時間が止まる
本当に止まったかのようだった
見れば、現れて初めてトゥルーウィンドラゴンの視線がシュウへ向けられていた
トゥルーウィンドラゴンがゆっくりと口を開く
トゥルー「お前は・・・風の、サーガか?」
シュウ「ん?あぁ、そうねサーガ。っていうか、ちゃんとシュウって名前あるよ!」
トゥルー「そうか、しかし似ているな、いや、その風は忘れない。その風そのものだ」
シュウ「は?」
言っている意味が分からずにシュウの目が点になる
トゥルー「私はこの世界の仕組みを整え、私のサーガとの別れ際、再び会う約束をした。
本当に、年で数えるのも面倒なくらい時が経った・・・久しぶりだ」
シュウ「へ?あんた誰よ!ってか、話聞いてくれんの?どうなの!?」
トゥルー「ああ、聞こう」
シュウ「ん、素直で宜しい」
トゥルーウィンドラゴンがシュウへ近づく
シロンがそれを阻止しようとする意思をランシーンが抑えた
シュウ「あのな、皆今困っちゃってるわけよ。幸せ〜!やってる時にさ、世界壊すだのやり直すだの」
トゥルー「やり直すのは、我々が望んだ事ではないか」
シュウ「ん?」
トゥルー「あの当時、世界は廃れていた。レジェンズは非常に好戦的、
人間もその中の感情からあんなものを創り出した」
トゥルーウィンドラゴンは目を細め、ジャバウォックを見つめる
トゥルー「私とお前は、それを何とかする為にこのシステムを確立しようとした。
あれを利用してな。今でも忘れないぞ、お前の言葉は・・・
今の世界は絶対間違ってる、絶対おかしい、何処で間違えたんだろ?みんなでやり直せたらいいのにな」
シュウはその言葉に妙な納得感があるらしい
それでも今にも沸騰しそうな頭を抱え、反論に出る
シュウ「いや、だからって今それをする事ないじゃん!もうちょっと待ってな、な?
良くなるかもしれないじゃん!」
トゥルー「こうも言ったぞ、あんまりみんなが不幸になる前にどうにかしたやりたいとも」
プシュー
シュウの頭がオーバーヒートする
後ろに倒れそうになったのをカネルドウィンドラゴンが支える
シロン「代弁するからな。確かにあんたも正しい。でも、皆変わり始めている。
長い戦いを繰り返す歴史の中で、好戦的なレジェンズは結構減ったみたいだ。
人間にしてみても、こいつみたいな奴もいる。そうだろ?」
トゥルー「だが―」
シロン「そう、言ってるけどあんたは正しい。いつかは不幸になるかもしれない。
失敗するかもしれない。それでも今は、こいつのわがまま聞く気になってくれねぇか?
同じ事を繰り返していちゃ、前に進めない。あんたが知ってるこいつの意見が変わったなら、
こいつは前に進んでるのかもしれねぇ」
トゥルー「今の状態が世界を維持するのにはベストだと考えている。それが崩れる事は―」
シュウ「お願いっ!」
シュウの輝く視線にトゥルーウィンドラゴンの目が開かれる
トゥルー「わかった」
シロン「へっ!?」
あまりにあっさりと承諾されてしまった事に
自分の発言は否定されたのにだのストーリー的な展開がどうだの
トゥルーウィンドラゴンから言葉が発せられる間もブツブツシロンは呟く
トゥルー「今から、私が作ったシステムを全て崩そう。
だが、そうすれば私は力を使い果たし、再び消えてしまうだろう。
何かがあったときは取り返しがつかなくなるかもしれない」
シュウ・シロン「それでもっ!」
トゥルー「わかった」
トゥルーウィンドラゴンはジャバウォックに向かって手をかざす
シロン「てめっ・・・!?」
トゥルー「信じろ」
ジャバウォックが消えていく・・・
そこに残ったのは、ティアマットとリンドブルム
トゥルー「彼らの役割、使命を解き放った・・・次は」
グリードー「お、おい・・・!」
ディーノ「世界が・・・近づいてくる!」
天井に貼り付けてあった地球が迫ってくる
トゥルー「この世界は元々地球にあったものを分断させたものだ。
これで使命関係なく地上でレジェンズが問題なく暮らせるほど大地に力は満ちるだろう。消えることも無い」
トゥルーウィンドラゴンはそこまでの作業を終えると両膝を着いた
シロン「お、おい・・・大丈夫か?」
トゥルー「最後に・・・お前らはどうする?」
シロン「俺ら?」
トゥルー「お前らも私と同じだ。世界を見守る風。未だにその使命は続いている」
ランシーン「・・・・・」
トゥルー「最後の力を使い、今のウィンドラゴン(勝利の竜)としてでなく、
好奇心のままに行動していたウインドドラゴン(風の竜)に戻す事ができる。それを望むか?」
シロン「あー、答えは決まっているな。この世界を見届ける。ここまで押し通したんだから引き受けるさ」
トゥルー「そうか・・・・・」
トゥルーウィンドラゴンが光に包まれ、徐々にその姿が薄れていく
シュウ「待って!まだ余裕あるんでしょ?何で消えるの!」
トゥルー『いや、消えはしない。こいつらの決心により私は残る事ができるだろう。
だから、何かあった時の為に私は力を蓄えよう。
世界に危機が訪れたら、再び会おう。それが、敵対する同士となってもな・・・』
上から迫ってきた世界が終に衝突する
強い衝撃と同時に、体が浮いた感じがすると、意識がどこかへ飛んでしまっていた