「なんなんだいったいこの数は!?」


シュウを背に乗せ逃げ回るシロン
できるだけ住宅街から離れていくように飛ぶ

時折竜巻を起こしけん制し、
囲まれそうになったらそこにもぶち込み道を作る
あまりの数に相手の姿を確認する暇も無い

ただ生気というものを感じず
相変わらずけん制程度の攻撃にも直撃している
それどころかこれほどの数に攻撃すらされていない

一体どういうことなのか・・・
ウィンドラゴンである自分や風のサーガ
それを邪魔だから消すというならば納得できる
特に今回はシュウを狙ってのことのようだ
確かにレジェンズである自分を仕留めるよりも数段楽だろう

だが、一向に攻撃らしい攻撃は飛んでこないのだ

シュウ「でかっちょ、あの〜こんな時でなんですが」
シロン「ぁあん!?なんだよそのこんな時に!」
シュウ「そろそろ、腕、限界です・・・」

先程から背中にしがみ付いたまま右へ、左へと揺さぶられていた
シュウの体力は限界に近づいていた

シロン「もう少し我慢しろ!手を塞いでたら対応しきれねえ!」


ようやく人気の無い荒野にたどり着く
そこでも一際高さのある切り立った崖のふもとに着陸した

シュウ「えぇっ!?ここじゃ囲まれまちゃいますよ〜?」
シロン「もう隠れる必要は無いんだよ!
ここなら多少暴れても問題ないしな」

それにシュウを守りながら戦うには壁を背にしたほうが戦いやすい

シロン「こいつらが俺達を呼ぶことになった元凶か?
どちらにせよ今は全部ぶっ飛ばす!」

シュウ「え?ちょ、ちょっと待って!」
シロン「この状況で何を待つんだよ!」
シュウ「戦うのは駄目だって!」
シロン「言いたいことは分かるが今回は状況が違う!」
シュウ「駄目なもんは駄目なんだって!!」

シロン「なっ・・・!何考えてやがる!?」

シュウが叫んだ瞬間風が巻き起こり
風に阻害され、翼が上手く動かせなくなってしまった

そんなこともできるのか・・・と感心してる場合ではない
今の風で周りの奴らを一旦吹き飛ばしたが
このままでは自由に戦うことができない

シロン「馬鹿なことやってねぇでさっさとこれを解け!
こっちがやられちまうだろうが!」
シュウ「だって!この戦いが終わったらお前らどうなるんだよ?」
シロン「は?」
シュウ「消えちまうんだろ・・・?やることなくなったら〜、それでっ!」
シロン「・・・・・っ!」

シュウの言葉に表情を険しくし、歯を食いしばる

確かにその通りだ
それにわかってる
わかってるとはいっても
どうすればいいんだよ・・・

戦いの為に生まれてきたとされるレジェンズ
その役割を終えた時
確かに人の前から姿を消すことになった

次に目覚める時もまた戦いの時

今は正にその時

だから、一緒に居られる

だが・・・・・


シロンは辺り一帯の気配を全力で探った

シロン「ここでやられちまったら結局一緒だろ?
安心しろ。ここにはその元凶さんは居ないようだ
だから、今は・・・」

シュウ「うん・・・わかった!」

拘束していた風が体に馴染みだす
力があふれ、その姿をコマンドクラスまで引き上げた


シロン「本当にお前ら邪魔だぜ!コマンド・トルネード!」




戦いが激化するとともに
風の軌跡を追っていた
ランシーンとハルカを乗せたロックバードが
シュウとシロンの元へたどり着いた


ランシーン「あそこですね・・・?」
ハルカ「うわっ・・・何よこの数!?」
ランシーン「来なくても良いぞ!」
ハルカ「レジェンズ沢山!望む所よ!」


シュウ「あ!わるっちょ!」
シロン「ようやく来やがったか。さっさと手を貸せ!」
ランシーン「言われずとも!」
シロン「ハルカはサーガを!」
ハルカ「シュウ君ね。まかせて!」

あっという間に役割分担を済ませると
再び戦闘体勢に入る

シロン「ついて来れるのか?」
ランシーン「誰に言っているのだ?」
シロン「へっ・・・じゃ、行くぜ!」


ハルカ「シフトエレメントよ!」
シロン「シフトエレメント!」
ランシーン「シフトエレメント!」

シロンとランシーンのシフトエレメントは
彼らの戦いやすい環境へと変えて行き
風が彼らの翼の動きを補助する

それとは別に、ハルカの駆るロックバードのシフトエレメントは
シュウを守るように風の結界が形作られる

シロン「遠慮なくぶっ放すぜ!ダブルウィングトルネード!」
ランシーン「疾風よ!刃となりて、敵を切り裂け!」

近い位置で戦うシロンとランシーンは
お互い巻き添えをくらってもおかしくはない位置に
遠慮なく攻撃を放つ

しかしその方向に視線を向けることなく
皮一枚で避けつつ戦っている

そのあまりに息の合った動きに
シュウとハルカと
そして同じレジェンズであるロックバードでさえも
そのまるで舞っているかのような戦いに目を奪われた

途方もない軍勢だったはずの者達も
嘘のように数が減って行った


シロン「動き・・・鈍って来てっぞ?」
ランシーン「しゃべる暇があるならば、もっと動きなさい・・・」


ほとんど倒してしまい、息が上がってきた時だった


「あ〜ら、やっぱり数で何とかするというのは浅はかだったかしら?」


ランシーン「誰だっ!?」
シロン「どっかで聞いたような・・・」


現れたのは黒い馬の体躯
そして紫の鬣に赤みを帯びた角
バイコーンの姿がそこにあった


「どうやらコープスの集団じゃあ力不足だったようで・・・
次はちゃんと私がお相手してあげちゃうからね?」

そう言って蹄で地面を叩くと
集団の姿は一様に姿は崩れ去っていった
相手をさせられていたのは闇の残骸とも言えるコープスに
バイコーンが幻覚を混ぜたものであった


シロン「キルビートか!?」
ランシーン「生きていたか、何の用だ?」

「誰それ?私にはちゃんとした可愛い名前が・・・
まあいいわ。随分と疲れちゃってるようだけど
私達の相手が務まるかしら?」


脅威を増した印象を見せ付けられる事によって
シロンとランシーンは必要以上の力を使ってしまっていた


続いて現れたのはガーゴイル、スケルトン、
それにヴァンパイアというネクロム衆であった


シロン「ちっ・・・これからだっての!」
ランシーン「待て、お前らの目的は何だ?」

バイコーン「目的?それはねぇ、そこに居る可愛い坊やに用があるの」
シュウ「え、俺っすか!?自分達そろそろ帰りたいんですけど〜」
バイコーン「あらぁ?まだ夜はこれからよ?
もう帰しちゃうなんてイヤイヤン♪」
シュウ「・・・・・おぇ」
バイコーン「・・・踏んづけてやる」
シュウ「ひぃっ!ごめんなさーい!」

シロン「結局こうなるんだろうが!ぶっ飛ばす」


勢い勇むシロン、続くランシーン
だが力の消耗、元々の相性の悪さからあっという間に
追い詰められていく

そしてついにシロンはコマンド化が解けてしまい
状況の悪さは目に見えるほどになっていく

シロン「ハルカ、隙をついてシュウと一緒に逃げろ」
ハルカ「えっ!?」

ヴァンパイア「そうはいかないですよ?」
シロン「ちっ・・・」

ランシーン「ぐぅ・・・」
スケルトン「それがウィンドラゴン様の力かい?」
ガーゴイル「少し暴れたりないぜ」


「だったらこっちが相手してやるよ!」
バイコーン「何者!?」


「ウィングトルネード!」

ネクロム衆全員を巻き込む形で竜巻が襲う


シロン「ウィング・・・」
ランシーン「トルネード、だと!?」


現れたその者は
ウィンドラゴンと似た姿をしている
いや、ウィングトルネードを使うのは
ウィンドラゴンかその真似事ができるヘキサドラゴンくらいなもの

そして目の前に居るのは・・・・・
以前感じた自身と良く似た風
追いかけた風

フィンとエンの姿がここにあった


エン「黒い方を倒す」
フィン「おーけい。じゃあ気合い入れるぞ!」


掲げられたのはタリスポッド
噴出すは風の力
紛れもなく風のサーガの力そのもの

その風はエンの力をコマンドクラスまで引き上げ
左手には弓の形状をしたブレイクアームド

エンは自身の翼から一枚羽を抜き取り
それを弓の弦に添え、引いていく

弓を握っている手の付近から竜巻が発生し
その竜巻めがけ羽が発射されると
導かれるように竜巻が発射された

エン「ショット・トルネード!」


竜巻を起こすというよりも
竜巻を飛ばすという攻撃は
ネクロム衆に避ける隙を与えなかった


バイコーン「やるじゃない・・・でもこの程度の威力で!」

エン「・・・・・・・」
バイコーン「え、ちょっと待って・・・」

エンの手には羽がいっぱい握られていた
これ位ならば同時に発射できる、という事だろう

なかなか退かない状態を受けて
脅し足りないと思ったのか
エンの目は獲物を見つけた無邪気な獣の子のように
目をぎらぎら輝き始めさせ
何かハァハァ息が荒くなっていった

フィン「あ〜・・・これ以上は色々歯止めが」
バイコーン「撤退!撤退よ!むきー!覚えてなさい!!」


そう言い背を向けると
先程のショット・トルネードの如き素早さで
逃げていくのだった


フィン「何だよ・・・もしかしてさっきの
簡単に避けれるほどの力を持ってるって事か・・・?
ま、いいか」


戦いが終わると同時に
近くに他の、レジェンズクラブの仲間達の気配がしてくる
ひとまず危機は乗り越えただろう

エンはゆっくりと地に降りフィンを降ろした

ハルカ「フィン・・・君?」
フィン「あれ?ハルカじゃねぇか。奇遇だな・・・てかさ・・・」
ハルカ「?」

フィン「ロックバードじゃないか!それにウィンドラゴンが2体も!
あ、エン入れると3体!?すげえな!というかお前さん黒いね・・・
もしかして新種?新種!?」
ハルカ「あ〜・・・なんか私と一緒の反応・・・」


そしてようやく到着したレジェンズクラブご一行
更にフィンのテンションは上がる

フィン「ブレイズドラゴンにグリフィンにビックフット、
ウェアウルフにマンティコア!?四大レジェンズ揃ってるじゃん・・・
何なの今日は!?祭り?これってまつ・・・」

肥大化するテンションは一部で張り詰めている
空気により遮断された


ランシーン「お前は何者だ」
エン「・・・・・・・」
シロン「まーいいじゃねぇか。とりあえず助けられたんだし・・・」

そう言いシロンはエンに近づこうとする

エン「来ないで・・・」
シロン「ん?」
エン「来ないで・・・!」
シロン「何言って・・・ぅ・・・ぁ・・・・?」

突然崩れるようにシロンは倒れてしまった

シュウ「でかっちょ!?」
エン「・・・・・え?」
ランシーン「貴様何を!?シロン、離れろ!」
シロン「力が・・・入らねぇ・・・」

その場に居る者達から次々驚愕の声が上がる


ランシーン「やはりお前は敵なのか!?」
フィン「エ・・・ン?」


エン「私は・・・違う、私はっ・・・!」


風がエンから吹き出し、コマンド化が解除される
そしてそのままエンは倒れこんでしまった

フィン「エンっ!大丈夫か!?」

フィンはエンの元へ
他の者はシロンの元へ駆け寄る

シロン「・・・・・あれ?」

先程とは打って変わり、あっさり起き上がり拳を握る
気だるさも疲労もすっかり抜けきっている
ランシーンもそのことに気がついたのか
シロンと同じ動作をして最後にはお互い視線を合わす

ランシーン「いったい・・・奴は何者なのだ・・・?」


気がつくと、もうすぐ夜明けを迎える時間となっていた



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