(起きろっ!起きやがれってんだ!)

すぐそこまで来ている闇の気配を受け取り
必死に寝ているシュウをシロンは起こそうとしていた

シロン「ガー!ガガガガガッガ!」
シュウ「なんだ〜ねずっちょ・・・がーがーうるさ・・イタタタっ!?」

シュウの髪の毛を引っ張り現実へと引き戻しながら
それと同時に窓辺まで誘導して窓をぶち開けた


シュウ「うわっ!外おっかねぇのいっぱい!!」
シロン「ガガッ!」

シロンは小さな親指(?)をぴっと立てている

シュウ「おぉそうか・・・ってタリスポッドどこだっけ?うべっ!?」

シロンはシュウにタリスポッドを投げつけ
それが顔面に見事にヒットした
フラフラするシュウに
シロンは相変わらずだとフシューっと鼻息を荒くした

シュウ「俺〜まだ寝〜ぼけてるのかな〜?頭フラフラ〜
意識カムバーック・・・そいでもってリボーン・・・」


閃光とともに窓から噴出した風がシロンの真の姿を形作る

シロン「さて、と。この時間帯に穏やかじゃねぇなあったく・・・」

暗闇で姿かたちを完全に捉えることはできないが
その数はかなり多いことを確認できた

シロン「おいおい・・・どういうこっちゃこれは・・・
俺だけじゃ相手しきれねえかも知れねえな・・・シフトエレメント!」

家を囲むように風の障壁が形成され
相手の足を止める
止めてる間に更に状況を確認していく

シロン「こんな数相手にしてたら巻き込んじまう・・・なんとか、
こいつらをここから引き離さねえと・・・!」


場所を移動するにもひとまず道が必要だと
周りを巻き込まないように力を制御した
ウイングトルネードを細かく放つ

しかし制御しているにもかかわらず
相手を次々とと吹き飛ばしていく

好都合ではあるが、違和感に気がつくまでに
さほど時間は必要なかった


シロン「なんだこいつら、まともに防御しやがらねぇ・・・」



そしてようやく最大の違和感に気がついた


シロンが攻撃を放っているにもかかわらず
その敵の視線は全くシロンに向けられていない

ある一点を見つめるように皆同じ方向を向いている

その視線の先に居るのは・・・・・


シロン「シュ・・・ウ・・・?」


確かにその視線の先にはシュウが居た

そしてその事を確認していたシロンの動きが止まる

シュウの表情は固まったまま動いていなかった
その瞳からは何を考えているのか感情が読み取れない


ただ、何か幻を見ているような表情

戦況を見つめるシュウの瞳から流れる一筋の涙

過去の記憶へのフラッシュバック


母の命が危険にさらされ
巻き込んでしまったことに流した涙
恐らく今、再び家族が危険にさらされていることに
シュウはその時の事を思い出しているのだろう

しかしこの敵の目的は何故シュウなのか

その疑問を振り払い
今最善の手を考える

シロン「おい風のサーガ!・・・シュウ、シュウ!」
シュウ「ぇ、な・・に・・・?」
シロン「ここから離れる、行くぞ!」
シュウ「待って!父さんや母さんは!?」

シロン「大丈夫だ、あいつらの目的は俺達だからな。
それならここから離れた方がいい、そうだろ?」

シュウが目的、などは口が裂けても言えない

いや、まだ確定した事でもないのだ
それなのにこんなことを口走っている
認めたくは無いがどこかで認めてしまっている

シュウ「そっか、だったら早く行こう、早く・・・
あれ?俺なんか顔ぐしゃぐしゃだ、ははっ」
シロン「・・・・・行くぞっ!」

いつもより優しくシュウを背に乗せ飛び立つ
少し距離を置いた所で家の状況を確認する

やはり周りに居た者達全てが家を離れ
こちらへ向かってくる

チッと一つシロンは舌打ちをし、シフトエレメントを解除して
その場を飛び去った






「ギッ!?」

その場から少し離れた町の外れ
エンは闇の気配に気がつき
その方向に視線を向け、体を震わせていた

目をぎゅっと瞑り、何とか気持ちを落ち着けようとする
それでもやはり心は落ち着かず
何度も何かが心に告げる

風が、危ない

そう分かっていてもその一歩が踏み出せない
自分は、自分という存在は・・・

その瞬間、風が優しく吹き付ける
その風に一瞬にして心奪われ
心を落ち着かせる

そうだ、この風を失ってはいけない
自分も行かなければならない


エン「ギッ!ギーッ!」

近くの草むらに寝ていたフィンの髪の毛を掴み
引っ張り、起こそうとする
しかし、熟睡しているのか、中々起きそうにない

更に力を入れて引っ張っていく
そしてある高さまで持ち上げるとぱっと手を離した

フィン「んがっ!?」

エンはフィンの持ち物の中から
タリスポッドを取り出し
頭を強打したことにより
ようやく目を覚まし始めたフィンの目の前にさらす

フィン「んぁ・・・エン・・・!?」

その行動にフィンの眠気がぶっ飛ぶ
リボーンすることを嫌がっていたエンが
自ら求めているのだ

フィン「いいんだな?」
エン「ギッ!」

フィン「エン、カムバック!いくぜ、リボーン!」

タリスポッドから吹き出す風はフィンの体を持ち上げ
気がつくと抱きかかえられるようにして
姿を現した風の竜の手の中に居た

風の竜、エンはただじっとフィンを見つめている

フィン「いいよ、何も話さなくたって
とりあえず、目的地まで空の散歩を楽しませてもらうからな」

そう言ってエンの体に手を触れ
優しくなでる

エンは少し驚いたあと
少し恥ずかしそうにしながら
少し焦るようにしながらフィンを背に乗せた

エン「ありがとう・・・」
フィン「んぁ?聞こえないな」
エン「・・・っ!?」

ちゃんと聞こえるように言ったはずなのに
そう返された言葉に顔が熱くなる
最初の頃は気にしていなかった事も
今では何故か恥ずかしい

エン「何でもないっ!行くよっ!」

反撃とばかりに少し荒っぽく飛び立つ
慌てるフィンの様子に悪戯っぽく笑う

飛行が安定してからも
フィンのしがみ付く力が変わらず
むしろ力強くなっていくことにエンは気がついたが
それは黙っておくことにした

いつも急に行動を起こす自分が不安を与えているだろうし
何より今のこの状況が
体越しに感じる温もりが
とても心地よいものに感じられた








「風が動き出したか・・・シロン、ランシーン、
そしてエン、それに風のサーガ、お前達はどの道を選ぶのか・・・」
「えっと・・・風の竜王様?」
「あぁ、すまない。無のサーガ、スタンと言ったか?」

無のサーガのスタンとヘキサドラゴンのパレットは
ようやく風の竜王の元へたどり着いていた

風の竜王「しかし良くここまで来れたものだな
流石は無のサーガとヘキサドラゴンだな」
スタン「あの、何をすればいいかとか良く分からないんですけども・・・」
風の竜王「風の力が必要なのだろう?」
スタン「そうです・・・良く分かりますね?」
風の竜王「それくらいしかこんなところにある用事など
それくらいしか思いつかんのでな」

風の竜王とその周りの環境は極寒であった

実際の所、今はパレットのシフトエレメントによって
ある程度軽減されているものの
やはり体に堪える

普段はもっと厳しい環境に居るそうで・・・
それは流石に人間であるスタンは立ち入ることができない

スタン「なんかすいません・・・」
風の竜王「いやいい。
世界が変わろうとしているのだ。協力は惜しまない」
スタン「世界が・・・?」

風の竜王「少し、昔話をしてやろう。私も文献などで得た知識だが・・・」

その瞬間、パレットのシフトエレメントの力が緩む

スタン「パレット・・・!」
パレット「んぅ〜・・・ゴメン・・・」

風の竜王「・・・かつて、レジェンズと人間が共に生活していた時代」
パレット「zzz・・・・・」
スタン「寒い、寒いから気を緩めないで・・・!」
風の竜王「・・・・・」


力を持つレジェンズ達は、違う属性同士で争い
領土の奪い合いを行っていた

人間もまた同様に魔力あるもの達
それぞれの属性のサーガを中心にして
戦いを繰り広げていた

人間達はその属性のレジェンズ達を神として崇め
利害の一致した人とレジェンズは手を組んだ

そして永遠に続くかのごとく続けられた戦いの末
世界は荒廃し、もはや再生の余地無しという
取り返しのつかない状態となっていった

その中に一組のサーガとレジェンズが居た
彼らはその戦いで埋め尽くされた世界の中で唯一疑問を持ち
そしてこう誰よりも強く願った
また最初からやり直せないものかと・・・

その心はこの世界の神に近し者の元へと届き
彼らにその力の一部を渡したという


風の竜王「それが最初のウィンドラゴンだと言われる」
スタン「ウィンドラゴンって・・・シロンだよね?」
風の竜王「今は、な。もしこのことが本当ならば
世界を変えるのはウィンドラゴンという事になるだろう
彼らに力を貸してやるといい。私もそれを望む」
スタン「わかりました。風の力、確かに受け取りました
世界が変わるとか難しい事は分からないけど、できることはやります!」
風の竜王「頼む。時間はあまり無いようだ、送ってやろう
次の竜王の元へ」

そう言うと風がスタンとパレットをつつみ
目的の場所へ導いていった

風の竜王「最初から私は負けていたのかもしれないな、風のサーガよ」


風の竜王は渡した分の風の力を取り戻すべく
深い眠りについた

時が動き出すその時が来るまで



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