フィン「勘弁してくれよな・・・」

この間逃げ回ったばかりだと言うのに
目の前の羽の生えたネズミ?ウサギ?
今でもまだ判断に困るこいつは
何故だか余計に元気さを増し、飛び回り
いくつもの店の窓に張り付いて中を覗いている

その全てが珍しいらしく
窓に張り付くたびにその瞳には嬉しそうな光が宿る
そして今度は・・・

フィン「あーあー涎たらして・・・ちょっくら食うか?」

そう問うと思いっきり嬉しそうに突進し、めり込んでくる
未だに慣れないその衝撃に少々悶絶する

フィン「わーかったから!ほら、中入るぞ」

ここ数日間エン、と名付けたこいつと
こんな生活が続いていた

こいつの本来の姿はウインドラゴンというレジェンズ
みたいなのだが
色々話しを訊く為に本来の姿をとらせようとすると
必ず察してしまうのか、止められる

ならばこうして一緒に行動するしかないのだけれども
どうにも進展しないままであり
やはり色々と気になって仕方が無い

話しかけても返ってくる言葉は

エン「ギ〜?」

これだ

段々と、とぼけたフリをしているのが分かってきた
何でそんなに嫌がるんだろう?
やはり追いかけられていたらしいあの時の事が
気になるのだろうか

それにたまに、そして今も不安な顔をしているような・・・

フィン「って、気のせいか」

食べ物が来るや否や自分の体よりも大きいのではないか
という量を平らげてしまうエン
やはり体の構造が普通ではないなと
レジェンズなんだなと思ったりもしてみる

目を潤ませるようにして喜びながら食べている
エンの姿を見ているととても心が和む

フィン「まあしばらく好きにするといいさ、だが・・・」

そろそろ懐が寂しくなってきている
レジェンズ追っかけをやっているフィンは
その過程で見つけた遺品等を売り、生計を立てている
当然安定することは無く、アルバイトで凌ぐのが普通だ

フィン「そうか、こいつを売り捌けば・・・」
エン「ギッ!?」
フィン「・・・冗談だ」
エン「・・・・・・(怒)」

とにかくどうにかしなければならない
かと言っても、一所に留まるのは俺もこいつも好きじゃな
い 何とかならんものかなあ・・・

エン「・・・・・・」
フィン「ん?どした?」

外に出て歩いていると
先程からエンの視線が一所から離れない

結局髪の毛を引っ張られてそこへ行く
勝手に行かなくなったのは少し進歩かな?

フィン「あ・・・これは・・・!」

急いで荷物の中から自分の研究ノートを取り出す
と、いうより遺品の価値のつきそうなものを
まとめただけのノートではあるのだけれど

フィン「間違いないな・・・」

街角の木下に埋まっていて、少し顔を出していたそれは
レジェンズが描かれた石盤のようだった

こんな場所に埋まっているものだから
価値はどれほどになるのかも分からないが
とりあえず愛好家はいる
それにいざとなれば・・・

フィン「あのハルカ=ヘップバーンにでも言えば
一発で飛んでくるだろうし・・・それにしても」

今回はエンのお手柄だ
流石はレジェンズといったところだな

フィン「やるじゃねえか。これでまた食べ歩きできるぞ〜?」

こうやって毎日遺品探ししながら楽しむのもいいかもしれない
そう思い始めていたのだった



「ふぅ・・・何も見つからないわ・・・」
「当たり前といったら当たり前だがね」


そうお互いに話しているのは
ハルカ=ヘップバーンとその父ユル=ヘップバーン

ここはダークウィズカンパニーのCEOであるユルの部屋
ここで二人は資料を読みあさる


ハルカ「実際、レジェンズウォーを阻止しようとしたあの当時に
ほとんどの文献を読みきってしまったのよねえ・・・」
ユル「地道に探していくしかないさ・・・それくらいしか今はできることが無い」

ハルカ「それもそうね・・・頑張りましょうか!・・・ってあれ?」
ユル「どうしたんだい?ハルカ」

ハルカ「パパ・・・そういえば頭・・・」
ユル「頭がどうかしたのかい?」

ハルカ「い、いや、なんでもないわっ」

ランシーン「只今戻りました・・・」
ユル「おお!戻ったかランシーン!そっちはどうだったんだい?」

ランシーン「進展しませんでした・・・」
ユル「まあ仕方ないさ・・・お互い事に全力で当たるしかない」

ランシーン「あれ・・・頭・・・」
ユル「ん?どうしたんだい?さっきから二人とも頭がどうこうと・・・」


当時の記憶違いなのかなんなのか
今のユル=ヘップバーンの頭には毛が無かったはずの部分には
しっかりと毛が生え揃っている


ランシーン「・・・・・」


バサリ、となんとなく違和感が無いように翼を広げ風を起こす
その風はユル=ヘップバーンの頭めがけてピンポイントで飛んでいく


ランシーン「!?・・・・・かつらじゃ・・・無い・・・」
ユル「おっとっと、もう少しゆっくり動いてくれないか?資料が飛んでしまう」

ハルカ「やっぱり・・・本物?」

闇のサーガとしての力の影響が去ったせいなのか
それとも・・・

気を取り直して作業に取り掛かる二人と一匹


ユル「なんでもいい・・・何かきっかけを・・・」
ハルカ「あ、そういえば・・・」


レジェンズたちと再会した喜びからなのか・・・どうして今まで忘れていたのか


ハルカ「知り合いのフィンって子とレジェンズ追っかけをしていて
ばったり会った日に、見つけたのはこれだけだって、白いネズミのようなものを・・・」
ランシーン「っ!それは本当かっ!」

ハルカ「ちょっとシロンさんとは違う感じだったし、ネズミ苦手だから・・・」


確証は無い
だが何も情報が無いよりは大分ましである


ユル「連絡は取れるのかい?ハルカ」
ハルカ「なんか急な連絡とかで縛られるのは嫌だとかで
いつも携帯の電源は切ってるのよねえ自分からかけてくるときはあるけども・・・」


まあメールくらいは送っておくわねと電話を取り出しメールを打つ

ハルカ「期待はできないわ。作業を続けましょう?」

やはり連絡は無く、作業も進展が無いまま時間だけが過ぎていく



突如ランシーンが珍しくも大きく溜息をする

ユル「どうしたんだい?珍しいじゃないか」

ランシーン「無理をしなくても良いですよ?それとも邪魔ですか?」

そのランシーンの言葉に部屋の外から小さく返事があったような気がした

ユル「ラド・・・」
ハルカ「ママ・・・」

ゆっくりと中に入ってきたのはラド=ヘップバーン
手にはサンドイッチが乗せられたお盆を持っている

ラド「違うんです・・・どう声をかけていいか迷ってしまって」

そう言うと資料が大量においてある机の端にサンドイッチを置き
優しく微笑みながら話す

ラド「少し、休憩しませんか?」
ランシーン「私は食事を必要としませんから、作業を続けますね」

あら、とラドは言い、少し苦笑いをする

ラド「ごめんなさいね?レジェンズが一息入れる時は
何が良いのかわからなくて・・・色々とダメね
最初に会った時も怖がってばかりで
助けてもらったのに、そのお礼もちゃんとできてない」
ランシーン「よしてください」

遮るように一言話し、言葉をとめる

ランシーン「会った当時はなんとも思っていませんでしたから
気負うことはまったく無いのです」

しばし言葉が止まり、少し重い空気が漂う


ユル「食べてみなさい。ラドが作るサンドイッチは最高だぞ?」

そう言われ、少し考えた後に手を伸ばし、一つ摘まむ

ランシーン「おい、しいです・・・」
ラド「・・・よかった」

休憩を取り終えた彼らは再び作業を再開する
その後も作業は続けられ、日は暮れていった


ランシーン「そろそろお休みになられては?」
ユル「いや、もう少しだ」
ハルカ「なら私も!負けるもんですか」

ユルとハルカはライバルにもなっているようだった
頼もしい限りだ
これならば近いうちに何かが見つかるかもしれないと
期待感が出てくる・・・その時だった


ランシーン「ネクロ・・ムだとっ!?」
ユル「どうした!?」

感じたのはネクロムの気配
それも一つや二つじゃない

ランシーン「風のサーガの元へ向かっている!?」
ハルカ「まさかシュウ君?」

また何故今の今まで気がつかなかったのかとランシーンが咆える
部屋を飛び出して行こうとするランシーンにハルカが飛び乗る

ランシーン「今回の相手は生半可ではないぞ」
ハルカ「分かっているわ。でも、今は私にはこいつがいる」

手に握られていたソウルドールは
ロックバードのソウルドールだった

ランシーン「わかりました。ならばあとは自分で何とかしてください」
ハルカ「勿論・・・リボーン!」

会社を飛び出すと同時にランシーンから飛び降り、
現れたロックバードの背に乗る

ハルカ「今回だって、見てるだけじゃないんだから!」


二つの風が、夜の闇のへと消えていった



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