ブルックリンから少し離れた市街地
とある家の窓から一人の少年が空を見つめ、風を浴びる
「いい、天気だなあ・・・」
からっとした心地よい風が体を撫でる
その心地よさに微笑み目を閉じる
「あらスタン、まだそんなところでぼーっとしてたの?
遊びに行くなりなんなりすればいいのに、もったいない」
スタン「う〜ん・・・」
スタンと呼ばれた少年は
母親の言葉に無気力に返答し、自分の部屋を見渡す
スタン「な〜んか、広いんだよなあ・・・」
自分の部屋なのに何故だか何か足りない気がする
そう思うようになったのはここ最近のこと
一体何故なのか・・・
こうやって風に当たっていると何かを思い出せそうな気がした
「スタン?なんか手紙が届いているわよ?アリサさんって方から」
スタン「えっ!?ちょっとそれ早く貸してっ!」
スタンはあわてて手紙を手に取る
記憶に無い名前のような気がしたが
何かを思いさせそうな気持ちが強くなっていく
「あらあら、もしかしてガールフレンド?」
スタン「わわわ、そんなんじゃないよ!・・・そうか、わかった。
大切な友達だよ!」
一筋縄じゃいかないんだけどね、と付け加えると
スタンの母親は一度目を丸くするとくすくすと笑ってその場を去った
スタン「どれどれ・・・・・?」
どきどきしつつ手紙の内容を読む
スタン「久しぶりね、スタン」
『久しぶりね、スタン
この手紙を読んだという事は恐らく、
間抜けな顔してボーっとでもしてたのでしょうね
恐らく記憶もまともに戻っていないのでしょう?
回りは結構大変なことになってきてるわよ?
詳しく話をしたいから
指定の時間、指定の場所に来なさい
まあ来る来ないは好きにすればいいわ
でもその場合は貴方の大事なヘキサドラゴンのパレットは
私が頂いてもいいという事よね?
心配しなくてもちゃんとパートナーになってあげるから
まあ来る来ないは好きにすればいいわ
まあ時間までは待ってあげるけど
多忙だからあまり待てないわよ?
それじゃあ色々楽しみに待ってるわね
アリサ』
スタン「ヘキサドラゴン・・・・・パレット・・・!」
甦ってくる記憶
また会えるという喜びが爆発しそうになる
スタン「場所は?時間はっ!?」
しかしそれを確かめると、一気に血の気が引いていくのが分かる
スタン「ギ・リ・ギ・リすぎるだろこれ!」
以前ならパレットの背に乗りあっという間だったが
今はいないわけで色々交通機関を利用しなければならない
急いで荷物をまとめていく
スタン「母さん!ちょっと出かけてくるからねっ!」
返事を待たずに飛び出していった姿に母親は思わず微笑んだ
スタン「ぜぇはぁ・・・この辺・・・だよね。冗談は通じにくいからなあ」
「あら残念、随分早かったのね」
スタン「アリサ!」
以前と同じように黒い服にツインテールの紫色の髪の毛
見間違えるはずもない
スタン「パレットは!?」
アリサ「はいはい、二言目にはそれなのね」
取り出したのはソウルドール
間違いなくヘキサドラゴンのもの
嬉しそうに受け取ろうとするスタン
しかし
スタン「うわ、うわっとっと!」
アリサ「ちょ、ちょっと!」
勢い余ってヘキサドラゴンのソウルドールをお手玉してしまう
わりと強度はあるが、割れてしまったらそれこそ・・・
スタン「あ、危なかったー・・・」
アリサ「・・・・・」
なんとか落ち着くと
表情を変えないままアリサの顔に影がかかる
スタン「ご、ごめん・・・怒った?」
アリサ「いえ、別に・・・・・?」
しかし明らかになにかゴゴゴと音を立てながら黒い何かが渦巻いている
アリサ「早く、呼んであげなさい・・・」
スタン「あ、うん!ソウルドールセット!リボーン!!」
風が吹き出し、その姿を実体化させていく
ちゃんと覚えている
一緒に旅して強くなったんだ
始めのころは泣き虫だったけど、今じゃ立派で
勇敢なカネルドヘキサドラゴンのパレット・・・
スタン「ってあれ?パレット?」
パレット「・・・ぐすっ」
スタン「ちまっ!?」
その姿は初めて出会った頃の姿に戻っていた
そう、泣き虫の
気がついたら抱きつかれていて
しっかり泣きべそをかいている
パレット「会いたかったよぉ・・・!」
スタン「あらら・・・はいはい」
顔を撫でてやるとパレットに笑顔が戻る
アリサ「その辺にしてもらえるかしら」
ここからが本題なんだけどと、見せ付けるなオーラが発せられる
スタン「ごめんごめん!・・・で、なんだっけ?」
アリサ「・・・・・・・!」
アリサのオーラが凄みを増す
パレット「うわぁ・・・」
スタン「やば・・・」
アリサ「新たな闇の力が産まれようとしているわ・・・」
スタン「えっ?」
アリサ「近いうちにね」
スタン「でもそれって・・・闇のサーガはアリサでしょ?」
アリサ「そう、でもね、まだ私は力が戻りきっていなくて安定していないの
闇の力も垂れ流し放題だし、コントロールも効かない
闇のレジェンズ達は、新たに産まれようとしているその力のほうへ
集結するでしょうね・・
・
荒くれ者達にとって、静寂の闇を好む私よりも
そちらの方が都合がいい・・・」
スタン「僕はどうすれば・・・」
アリサ「そちらの方はシュウ君達に任せましょう・・・
スタン、貴方にはもしもの時の為に、力を集めてきて欲しいの」
スタン「具体的にはどうすればいいんだい?」
アリサ「ヘキサドラゴンはどこにも属さない特別な存在
その能力を使えば各地に残る転送ゲートからこことは違う次元に干渉できる
そこから竜王に会い、力を貰ってきて頂戴」
スタン「えっと、ま・・・また・・・?」
アリサ「馬鹿ね貴方は。またって分かるのはゲームをプレイした事がある人だけよ
文句を言ってないで早く行って来なさい」
スタン「は〜い・・・あ、でもそれなら闇の場所は分かるのかい?」
アリサ「それは・・・」
そこで初めてアリサの表情が曇る
スタン「あ・・・」
アリサ「ごめんなさい、今は駄目なの
私の力が安定してないせいで準備に時間が必要だわ・・・
最後にまたこの場所へ・・・」
スタン「うん、わかった。じゃあ行くぞパレット!」
パレット「うん!」
スタンはパレットに飛び乗る
パレットが翼を広げ羽ばたく
スタン「よ〜し!行けぇ!・・・・・・・あれ?」
必死に翼を動かすパレット
パレット「んーとね、絶妙に飛び立てない・・・」
スタン「随分と、鈍ってるんだねぇ・・・しょうがない、歩いていくかっ!」
早速困難にぶち当たるがスタンの表情は明るい
また一緒に冒険できるから
アリサ「お願いね・・・?」
去っていったその後姿に届かない言葉を一言呟き
アリサは闇の中へ消えていった