『今日もいい風だな〜』


今日は草や花が一面に広がる草原の中にいる
周りに何一つ障害物が無いこの場所は
絶えず少し強めの風が吹きぬける

気まぐれなその風が草花を揺らす
その揺れて擦れる音に耳を傾ける
運ばれてくる匂いは風の吹く方向が変わるたびに
様々な、違った匂いを運んでくる


(色々な場所へ連れて行ってもらったけど僕は一番ここが好きかな〜
あ、でもやっぱりまだまだ色々な場所へ行きたいな
僕はどこにでも行けるんだって!
ヘキサドラゴンって種族らしいんだけど
今は僕しかいないとかで、ちょっと寂しいかな・・・

ん〜とそれで!ジメジメしたジャングルでも、水が無い砂漠でも、
水の中でも、果ては極寒の山岳地帯や
灼熱の火山地帯でも行けるらしいんだけど・・・う〜ん)

何か不安になってくるなあ
でもやっぱり一度は行ってみたいかも!
もしかしたらそこの方が好きになるかもしれないし
また冒険してみたいな〜
早く帰ってきてくれないかな・・・
もう待ちきれないよ!)
『あ、帰ってきた〜♪』

「ただいま・・・パレット」
『うん!お帰りアリサ!』

(アリサはいつも余り元気は無いんだけど・・・
帰ってきて声をかけてくれると少し元気になるのが分かるんだ)

「今日は・・・どこにしようかしら・・・」
『わあ!どこか連れて行ってくれるの?どこにどこに〜?』

「たまには火山地帯もいいかもしれないわね・・・」
『・・・・・大丈夫・・・なのかなあ・・・』

「その前にお着替えしないとね」

(アリサは僕の体を赤くしてくれたんだって!
何でか知らないけど僕は目が見えないんだ・・・
良く話しかけてくれるから寂しくは無いんだけど
やっぱりアリサの姿を一度でも見て見たいんだよね
ん・・・?なんか体の中が熱くなってきたような気がする!)

「じゃあ早速行きましょうか」
『これならきっとへっちゃらだね!』


風景が見る見る変わっていき、所々マグマが噴出す火山地帯へ辿り着く
地面の隙間に覗く赤い脈は幾重にも広がっている


『流石にあっついな〜』
「ちょっとやり過ぎたかしら・・・でももう慣れちゃったでしょ?」

(そう言われるとなんか本当に気にならなくなってくるから不思議〜
逆になんだか体の中から熱いものがこみ上げてきて
何かテンション上がってくる感じ!)

「ふふふ・・・じゃあしばらくその辺を探検してみたら?
もしかしたら何か発見できるかもしれないわよ?
・・・じゃあ、そろそろ行くね?今度は海がいいかしら・・・」
『僕はどこにでもいけるんでしょ?今回で自信がついちゃった!
楽しみにしているよ!・・・っと冒険冒険♪行って来るね〜!』


アリサは手から筆を下ろす
見つめているのは自分が描いた絵画
そこにはヘキサドラゴンのパレットが
楽しそうに火山地帯を飛び回る姿が描かれている
その絵の中のパレットの目は閉じられたままだった


「馬鹿ね私・・・何を求めているのかしら?」


窓辺で風を受けるアリサ
自嘲交じりのその言葉と共に顔を伏せる


「文明の黄昏時・・・もうすぐそこに来ているのね・・・」


手で風を撫でるような仕草をして何かを感じ取る
以前との風の違いを確かに感じ取る


「風のサーガ・・・いますか・・・?」
「ええ、ここに・・・」


アリサに声をかけてきた者は白い六対の翼の持ち主
カネルドウィンドラゴン


「風のサーガ・・・貴方は早々この私を覚醒へと導いてくれた・・・
だがまだまだ不安要素はある・・・少々付き合ってはくれないだろうか?」
「もちろんよ・・・いくらでも手伝ってあげる」

「すまない・・・文明が滅びる戦いというのを分かっていながら
私共に協力を惜しまない貴方には・・・」
「気にしないで・・・元々悪いのは私達人間よ・・・貴方は悪くないわ」


そう自分に言い聞かせるような口調で雑念を振り払い家を後にする

そう、私は風のサーガ。私は戦いを勝利に導くこのドラゴンに協力する
この世界を浄化するためには必要であることは重々承知した
この戦いでもし負けるようなことがあったら真にこの世界は破滅を迎えるかもしれない
それだけは避けなければならない
それが私の使命
たとえその戦いの勝利が自らを滅ぼす事だとしても・・・!

でも本当は嫌だ、怖い!でも逃げられない!!
だからこの心を少しでもごまかす事ができるのなら
こんな馬鹿な事だってやってもいいじゃない


「結局、頭からレジェンズは離れていないんだけどね・・・」



『アリサ!今日は海だよね?楽しみにしてたよ♪』
「それじゃあ早速着替えましょうね」

パレットの体を青く塗り替える
今日もパレットは気持よさそうにしている
気持よさそうに海を泳いでいる

本当はこうやってレジェンズ達と遊んでいたかった
最初はあのウィンドラゴンともたくさん遊んだ
それはもう本当に馬鹿みたいに・・・

だが使命を知ってしまった
その使命を語る彼の表情は悲しそうだった・・・

悲しむのは私達だけでいい
だからパレット、貴方だけは最後までそうやって
楽しそうにしていてちょうだい
それが私の心の支えになるから
楽しかった思い出が再びよみがえるから・・・

だから最後まで貴方の目は閉じたまま
私の悲しむ姿を見せてはいけないから



(なんだかわからないけど笑っているような時に限ってなんだかとても悲しそう
でも楽しそうにしている僕を見るとなんだか元気が戻ってきている気がして
とっても嬉しいんだ!
僕にとってはアリサとアリサが創ったこの世界が僕の全て
だからアリサ!きっといつか・・・きっといつか!
僕は君の事を見たい
いつか君を直接感じたい
どう考えても無理かもしれないけど
でも・・・・・
きっといつか会えると信じてる!



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